今日は隆也君のお母さんに頼まれて、隆也君の家でご飯を作る事になりました。
私は昔からお世話になった阿部ママさんに頼まれちゃったら、どうしても断れないのです。
と言う訳で、誰もいない阿部家で、台所を借りております。
(ママさん、私を信用しすぎじゃないですか?いや、何かを盗む理由もないんですけども)
「さて、作りますか」
古い野球アニメの曲を歌いながら、早速作り始めました。
今日はカボチャシチューのルーが手に入ったので、それを作ろうと思ってます。
私はカボチャが大好きで、確か隆也君もシュンちゃんもシチューは嫌いじゃなかったはず。
カボチャを切るのは大変だから、冷凍カボチャを使おう。
うん、現代人の知恵と言えましょう。
タマネギを切りながら、冷凍カボチャをレンジに突っ込んでいたら、玄関で物音がした。
まだ時間的に遅くないって事は、きっとシュンちゃんだ。
「ただいまー…って、ちゃん!なんでウチいんのー!?」
「おかえりなさい、シュンちゃん。今日はママさんに頼まれて、ご飯を作っているのです」
「マジで!何作ってんの?」
「シチューですー。カボチャシチューのルーが手に入ったのです」
「すげー、そんなの売ってるんだ」
「もうちょっと待ってて下さいねー」
シュンちゃんは昔から、私に懐いてくれています。
私も昔から、シュンちゃんを可愛がっています。
私たちの共通点と言えば、きっと隆也君にイジメられるところでしょう。
タマネギ、お肉、ニンジンを炒めて、柔らかくなるまで煮ながら灰汁をとって。
その間に、シュンちゃんと一緒にジュースを飲んでお話をしました。
どうやらシュンちゃん、今野球が楽しくて仕方ないらしいのです。
隆也君と同じ道を辿る事になりそうですね。
2人とも、凄い野球選手とかになっちゃったりするのですかね?
「なぁなぁちゃん。ちゃんは何か今夢中な事ねーの?」
「うーん…なんでしょうねぇ…」
「お菓子作るのとかは?好きなんじゃないの?」
「好きだけど…2人の野球ほどじゃない感じですかね?」
「ふーん」
「そろそろルー入れてきますね。そしたら完成ですから、一緒に食べましょう」
「マジ!やった!オレ、超腹減った!!」
本当に、シュンちゃんは可愛いです。
シュンちゃんを見てると、私もほんわかします。
ルーを入れて、解凍したカボチャを入れて、ぐるぐるかき回して。
牛乳を入れたら、完成するのです。
「すっげ、うまそー!いっただっきまーす!」
「いただきます」
シチューは意外と美味しいです…これもルーの力ですね。
シュンちゃんも喜んでくれて、私も一安心です。
しっかり2杯平らげて、シュンちゃんは後片付けも手伝ってくれました。
シュンちゃんはいい子なのです。
一通り片付いた時、お母さんから『帰りはいつになるの?』というメールが着ました。
時計を見たら、もう結構いい時間でした。
明日の予習もしたいので、そろそろ帰らないと拙いかもしれませんね。
シュンちゃんに、そろそろ帰る事を伝えました。
「えー!?まだ兄ちゃんも帰って来てないのにー」
「そうなんですよね…。久しぶりに隆也君とお話したかったのですが…」
「高校とかで喋んないの?」
「クラスが違うと、お話する機会もありませんので…」
「じゃあ、尚更じゃん!もうちょっとくらい、兄ちゃん待ってなよ!」
「そうですねぇ…でも、今日はコンビニに寄ってルーズリーフも買いたいので…」
すると丁度タイミングよく、玄関が開く音がしました。
あ、兄ちゃんだ!と、シュンちゃんが勢いよく玄関の方に駆けて行きました。
玄関の方から、2人の声が聞こえてきます。
「ちゃん来てるんだって!」
「はぁ?が?」
「ちゃんが夕飯作ってくれたんだぜ。カボチャのシチュー」
「ふーん」
隆也君の興味なさそうな声が聞こえてきました。
……隆也君は昔から、ちょっと冷たいところがあるのです。
でも、何でか変なところで優しいんですよね。
すぐに、リビングのドアから、2人が入ってきました。
そして少し疲れ気味の隆也君と、目が合いました。
「」
「あ、隆也君こんばんは」
「夕飯作ってくれたんだってな」
「簡単なモノですよー。よかったら食べて下さい」
「ん。貰う」
「じゃあ、私はそろそろ帰りますねー」
もう帰っちゃうのー!?と言うシュンちゃんに、また来る約束をして。
私は上着を着て靴を履いて、帰ろうと…していたのですが。
隆也君が私の横で靴を履き始めた。
「隆也君?」
「送ってく。すぐそこだけど」
「いいですよー。私、コンビニに寄って行くので…」
「だったら尚更だろ。コンビニまで付き合うよ」
「で、でも隆也君、疲れて…」
「を放っておくほうが安心できねーよ。ほら、行くぞ」
++++++
隆也君は本当に、コンビニにまで着いて来てくれました。
お礼に飲み物か何かを買おうとしたら、あっさり断られました。
隆也君は、たまによく分からないところで遠慮深いのです。
「本当に、ごめんなさい…」
「何が?」
「送って戴いて…隆也君、疲れているのに……」
「お前鈍臭いし、絶対どっかで襲われるだろうしな。そしたらおばさんに顔向け出来ねぇし」
「……隆也君は本当に、言い方が意地悪ですよね…」
憎まれ口を叩きながらも、ちゃんと送ってくれる隆也君。
久々にちゃんと見た隆也君は、昔より背が高くてしっかりした男の子になっていました。
学校で見かけただけじゃわからなかったけど、成長してるんですね…。
私なんて、ちっとも変わらないのに。
「つーか聞き忘れてたけど、何で今日ウチに来てたんだよ」
「ママさんに頼まれたのですよ」
「…そういや今日、家にいないって言ってたっけ」
「はい。なので、家にあがらせて戴いて、作ったのですよー」
「帰ったら、食うから」
隆也君も、美味しいと言ってくれるでしょうか。
出来れば目の前で食べて欲しいのですが、私もずっといるわけにもいかないので…残念です。
お互い他愛もない事を話しながら、家までゆっくり歩いてたのですが。
楽しい時間が過ぎるのは早いもので、あっと言う間に家に着いてしまいました。
「隆也君、ありがとうございました」
「おう。つーか、今度はオレがいる時に作れよな」
「はい、隆也君がいる時に、隆也君が好きなものをお作りしましょうか。その時はシュンちゃんと3人で…」
「……別にシュンはいらねーだろ」
「? 何故ですか?昔みたいに3人でテーブルを囲んで…」
「あー…もういいよ。意味わかってねーみたいだし」
「?」
隆也君はバツ悪そうな顔をしていましたが、私にはよくわかりません。
でも本当に、3人でご飯食べたいですね…いっぱい笑ったり、お喋りしたり、昔みたいに楽しい事したいです。
「じゃ、またな」
「はい。隆也君もお気を付けて」
はちっとも分かってない。
オレがシュンとが2人きりでいた事を、面白くないと思ってる事を。
そして、久々に話せて、あの昔から変わらない敬語が聞けて、喜んでいる事も。
最近は、何だか可愛くなった。
昔よりもずっと、色んなところが成長している。
(いや、そう言うところばっか見てるわけじゃねーんだけどさ)
と会うと、どうも憎まれ口ばっかになる。
こう言うところは、オレ、どうしようもなくガキだよな…。
だからもう何年も、ずっと幼馴染のままだ。
明日、のクラスに行って、お礼でもするかな。
今年は少しずつでも、と接する機会を増やす。
それで、少しはオレを意識して貰わないと、前に進めねーし。
密かに目標を立てつつ、少し冷たい風が吹く春の夜道を、一人歩く。
帰ったら、の作ったシチューで、体、温めるか。
今までにない感じのヒロインにしようと思ったら、変な子になってしまいました…。
敬語キャラって結構好きなんですが…ちょっと微妙ですかね?(笑)
危うくシュンちゃん夢になるところでした(笑)
阿部が帰り送らなかったら、完全にシュンちゃん夢、譲歩して阿部兄弟夢です…。
でも、“阿部兄弟+幼馴染ヒロイン”って話は、書いていて楽しかったです。
……これ、シリーズ化したら面白いかもなぁ…(遠い目)
シュンちゃんのキャラがいまいち掴めてません…本誌読んでないからかな。
誰か、シュンちゃんを教えて下さい(切実/笑)
ちょっと先の展開が気になる感じで終わらせちゃったのが、気がかりですかね…。
もしかして続き気になってる方とかいらっしゃるのかな…(汗)
万が一いらっしゃいましたら、ご一報下さい…何かしら考えたいと思います(続編とか?)
2008/4/27