好きなのに、好きなのに。
本心が見えない彼の事を、大嫌いになりたかった。
涙で滲んだ愛の唄
は泣かない子だよね。
そう言っていたのは、お母さんとか、お兄ちゃんとか。
親友のも、は強いって言ってくれた。
でも、そんなの嘘だって。
私はいつも、一人で泣いているよ?
誰も知らないだけで、本当の私は泣き虫だ。
おばあちゃんが死んだ時、大切なコーヒーカップを割った時。
そして、こうして文貴が頑張ってる時。
付き合ってるはずなのに、何も出来ない私。
そんな自分が腹立たしくて。
そして何も言わずに笑っている文貴に、不安を覚えて。
教室から見える夕陽が、私の涙を静かに照らす。
「言わなきゃ、いけないのに…」
文貴の練習が終わるのを待つ勇気が無い。
文貴に伝える勇気も無い。
私は、教室を離れた。
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From 水谷文貴
Sub 遅いけど
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今から外出れない?
練習終わったら、公園で待ってる。
帰りはちゃんと送るから!
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文貴からのメールを、返信したくなかった。
開くのすら、怖くて躊躇したのに。
開いたら開いたで、会いに行かなきゃいけない。
『待ってる』と言う文字が、私を動かす。
「文貴、なんで…」
このタイミングで、私を呼ぶかなぁ…?
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「あ、来たー」
私の家から走って3分の公園で、文貴は滑り台の上で待っていた。
いつも通り、私を見ると笑ってくれる。
その笑顔が好きで、私は文貴に告白した。
でも、今はその笑顔が不安だった。
無償で与えられる優しい笑顔が、私を不安にした。
「?」
「………う、ん。来た…」
文貴が、滑り台を滑り降りてきて。
動けないままの私を気にせず、近付いて来た。
まともに文貴の顔が見れず、私は下を向いたまま。
そのまま、私の右手は文貴の両手に包まれた。
「最近、一緒に帰れなかったら。久々にちゃんと2人で会いたくて、夜遅いけど呼んじゃった」
「うん…」
「の教室行くと、巣山とか栄口いるからなー。2人きりで喋れないからさ」
「そう…だね…」
久々にちゃんと文貴と向き合って。
今、私凄く緊張してる。
顔をあげると、文貴の笑顔が僅かに曇っていた。
「、オレの事嫌い?」
文貴の言葉に、息を呑んだ。
違う、違う、文貴が嫌いなんじゃない。
嫌いになりたくても、嫌いになれないよ。
だって私、文貴好きだもん。
「嫌いじゃないよ…」
「だって、オレと別れようとしてたでしょ?」
違う、と呟いた声は、小さすぎて文貴には届かない。
いや、届ける事が出来ない。
別れようとした事を、否定出来ないから。
「、最近オレの顔見ると悲しい顔するんだよね」
「そんな事、ないよ…」
「そんな事あるよ。オレ、の事ちゃんと見てるから分かるよ」
文貴は、私を見てるんだ。
私もちゃんと、文貴を見てるはずなのに。
私の手を握る文貴の手が、強くなる。
「、オレ、ダメかな?」
「ちゃんとの事、見てなかった?」
「もっとに出来る事があるなら、オレ、ちゃんとやるから…」
文貴の笑顔が、崩れた。
泣きそうな文貴は、懇願するように私を見ている。
違う、嫌だ、ダメ。
文貴に、そんな顔をさせたくない。
「……私、文貴、凄く好きなんだよ…」
搾り出した声に反応して、文貴の手の力が僅かに緩んだ。
別れる事以外の道を、私に選べる事が出来るなら。
今、文貴に本音を伝えるしかない。
「文貴、いつも、私に笑ってくれて…」
「私、文貴に何も出来なくて、役に立たなくて…」
「でも、文貴、凄い笑ってくれる…」
「何か、申し訳なくて…でも、文貴が好きで…」
「、間違ってる」
文貴が、私の言葉を遮るように口を開く。
そのまま文貴の顔が近付いて。
文貴と私の額が、こつん…と触れ合う。
「はオレの彼女」
「がいてくれるだけで、オレは嬉しいの」
「寧ろ、がいないだけで、オレ、絶対ダメになる」
「、オレを好きでいて?ね?」
涙声で、うん、と言った私の声は、文貴に届いたかな?
文貴の顔が近付いてきて、キスされる寸前に見えた文貴は。
いつも以上に優しく、そして温かい笑顔を浮かべていた。
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『、今度お昼一緒に食べよ?』
『うん、一緒に食べよう』
『帰り待ってて貰うのは…さすがに悪いし。夜遅いし』
『何で?文貴が待ってて欲しかったら、私、待ってるよ?』
『嬉しいけど…やっぱダメ。オレが不安』
『?』
『だって夜遅いのに、一人で待たせるなんて、オレ嫌だ』
『……文貴が、そう言うなら…』
『………でも、たまにはこうして、手とか繋いで帰りたいかも』
『そう、だね…こうして帰るの、いいかもね』
左手に感じる、文貴の体温
握り返してくれる度に、存在を感じられる
本当に、本当に、幸せで
この先も、私の傍で、文貴が笑ってくれますように…
中編になりそうなのを、必死で堪えました…(汗)
何でこう、上手く(小説の長さを)調節出来ないかなぁ、私は…。
えー、とりあえず、文貴です。
初文貴の癖に、やたら暗めの話になってしまいました…すみません。
何かもう、必死で最後ハッピーエンドにした感じです(苦笑…)
文貴は優しい子だと思います。
だから、彼女をとっても大切にすると思うんですよ。
ぽやぽやした笑顔で、包み込んでくれる…はず。
文貴視点も書きたいなぁ…。