「榛名は今日も自主練すんの?」
「おー」
「加具山センパイは?」
「来んじゃねーの」
「じゃあ、2人分のドリンク、用意しておくね」
「つーかいちいちウルセーな、。黙ってやっとけよ」
榛名元希。
高校2年、野球部所属、投手。
属性…俺様。
。
高校2年、野球部所属、マネージャー。
属性…天然。
実はこの2人、付き合ってます。
「秋丸!秋丸!」
「どうしたの?」
「あのさ、秋丸は甘いの好きー?」
「? うん、まぁ普通に食べるよ?」
「コレ、食べない?さっき調理実習で作ったんだー」
笑顔のが出したのは、手作り感満載のマドレーヌ。
これを榛名を差し置いて食べて良いのか…。
アイツのキレた顔を想像すると、正直素直に食べにくい。
でも、この笑顔のを拒否するほうが、もっと辛いかもしれない。
「いいの?榛名じゃなくて…」
「榛名はいーの。だって榛名は誰かから貰ってるだろうし。それに、マドレーヌって、秋丸っぽくない?」
うっわー…なんか、凄いに惚れそう。(いや、惚れないけどさ)
こう言う事さらっと言えちゃうのはの特権だよね。
天然って怖いなー、凄いなー……真似出来ない。
でも、“マドレーヌっぽい”とか言われたら…やっぱ食べない訳にはいかないよね。
「じゃあ、貰うね」
「うん。どーぞ!あ、秋丸ももしかして沢山貰ってたりする…?」
「いや、オレはあんま貰うようなタイプじゃないし。いただきます」
は基本優しいし、可愛いし。
多分、理想の彼女像だとは思う。
でも、こうして普通に男子と仲良くしちゃうし、誰に対しても笑顔。
それが、榛名的には気に入らないんだろうなー。
独占欲の塊みたいな奴だし。
表面ではこうやって冷たい彼氏やってるけど。
きっとどっかで不満とか爆発させちゃうんだと思う。
「美味しいよ、。よく出来てるね」
「うん、ありがとう。秋丸に食べて貰って、良かったよー」
「オレ、そんなにマドレーヌっぽかった?」
「うん!」
……オレもつられて笑うしかない。
しかし、こんなところ榛名に見られたら、絶対怒られるよなァ…。
俺様何様榛名様、世界の中心が自分みたいな奴だし。
何より、に冷たく接してるくせに、実は“超大好き”だし。
「じゃあね、秋丸。部活でねー」
「うん、じゃーねー…」
あーあ、はオレの運命なんて、知ったこっちゃないんだろうな…。
「榛名ー、アタシたちこれ作ったんだけど、食べない?」
「おう、食う食う」
「マドレーヌ。どう?アタシの結構上手く出来てるでしょ?」
「んー、んまい」
「よかったー」
「あ、榛名君私のも貰ってよー」
……ホント、榛名他の女子に貰ってるよ…。
のマドレーヌを食べた後、B組を覗いてみる。
榛名の周りには女子が群がってて、皆寄って集って榛名にマドレーヌを渡していた。
確かにの言う通り、榛名は沢山貰っている。
でも、アイツの性格からして、貰えるモンは貰っとけーって感じなんだろうなー…。
ホントに欲しいのは、のマドレーヌなのにね。
「秋丸、テメちょっとこっち来いよ」
「…………」
グラウンドに行く途中、早速榛名に捕まった。
しかも…声が明らかに怒ってるよ…。
とりあえず、しらばっくれてみよう。
「何?」
「昼休み、何か言ってなかったか?」
うわー、恥ずかしいヤツー!
のマドレーヌの行方が気になってんだなー。
ったく、他人に話す時はの事「」とか呼んじゃって。
自分的には隠してるんだろうけど、独占欲丸出しなんだよな。
「何かって、何?」
「いや、だから、その…ほら、調理実習の話とか…?」
「オレは知らないよー」
「ほ、ホントに知らねーのかよ!?一言も、言ってないのか!?」
「うん」
「み、み、見てもいないのか?」
「何を?」
「……な、な、な…何かをだよッ!!」
や、や、ヤバイ…笑いそう。
此処まで笑わずに受け答えてんのだって、奇跡に近いのに…!
普段見られない榛名を、オレは心底楽しんでいた。
でも、の気持ちを考えると、榛名の“貰えるモンは貰っておけ”主義は酷いよな…。
よし、此処はの為にちょっと榛名を刺激してみるかな。
「榛名さァ…もしかして、家庭科選択してる女子が調理実習で作ったマドレーヌの事言ってる?」
「そ、そうだったかもな!」
……コラ、耐えろオレ!
ここで笑っちゃったら、全てが台無しだ。
「のそれ、知ってるよ」
「なッ!?ど、何処に…」
「オレが食ったよ」
「はァ!?」
掴みかかってきそうな勢いで、榛名が詰め寄ってきた。
が絡むと、すぐ榛名は感情的になるんだよね。
そうは分かってるものの、やっぱりビビる。
でも、自分から喧嘩売ったんだし、此処で引いちゃダメだよな。
「言ってたよ。榛名は沢山貰えるからいいんだって」
「は…?」
「榛名は誰かに貰うから、自分のはあげなくていいって」
「が、そんな事…?」
「榛名、のが欲しいんだったら、の気持ちも考えてあげたほうがいいよ」
素直じゃないのにが大好きな榛名と、冷たくされても榛名が大好きな。
この2人が、上手くいきますように!
「…」
「ん?榛名?どーしたの?」
「いや、だから、その…」
「?」
自主練を終わらせて、加具山センパイを追い出してと2人きり。
秋丸に言われて、気付いた事がある。
オレはきっと、にスゲー冷たい。
オレは死ぬほどが好きだ。
でも、それをちゃんと伝えた事がない。
寧ろ気持ちと逆の行動をとって…を困らせてた。
自分でもホントガキみたいだと思う。
でも、が好きな気持ちは誰にも負けないと思うし、を好きな奴は抹殺したいほど気に入らない。
冷静に考えると、オレ、ホントはに嫌われても可笑しくない存在だよな。
オレがに冷たい態度されたら…絶対ヘコんでる。
つーか寧ろ、再起不能くらいになってると思う。
結局、スゲーに甘えてんだな、オレ。
「榛名ー?どうかしたの?どっか痛い?」
「いや、そうじゃなくて、その…」
「何か今日ヘンだよ、榛名。やっぱ具合とか悪いの?」
「あー、いやー…」
あぁ、ダメだ。
を目の前にすると、こんなにも思ってる事が口に出来ない。
ダメだ、オレ、ホントダメすぎる。
でも、今日は、ちゃんと伝えなきゃ…
「は、さ。オレのこと…その、好き、か?」
オレがやっと口に出した言葉は、考えてた事とは違って。
ホントは普段の態度とか、いっぱい謝りたい事があったはずなのに。
結局口にしたのは、自分への気持ちを確かめる言葉。
一瞬驚いたのか、目を見開いた。
でも、すぐにふわっと笑って(超カワイイ)、答えてくれた。
「元希、大好きだよ?」
あー、もうダメだ、オレ。
これだけで、死んでもいいくらい、ホント嬉しすぎる。
思わず腕を伸ばして、を腕の中に閉じ込めた。
「ホント、今日どうしたのー?」
「いや、何もないけど…」
「“けど”って事は、他に何かあったの?」
「違っ…そうじゃなくて、えーっと…」
迷ったまんま、上手い言葉が何も浮かんでこない。
久々に感じた、腕の中のの体温に…バカみたいに動揺していた。
頭がぐるぐるした状態で、最終的に出てきた言葉はコレ。
「今度から、人前でも名前で呼ぶから」
唯一の救いは、が笑って頷いてくれたコト。
今度はちゃんと、自分の気持ちを伝えられますように!
やっとバカ可愛い(?)榛名が書けました…(笑)
苦労性の代名詞(な気がする)秋丸君視点を中心に書きましたが。
秋丸は、榛名に怒鳴られない為に我慢してる事が結構あると思います(笑)
(アニメでは天気の話してウゼーとか言われてたよな…あれは可愛かった…/何)
何と言うか…とにかくバカで不器用で情けないけど、ヒロインが好きすぎる榛名が好きです(笑)
ぶっちゃけ超ドSな榛名とかも凄い好きだったりするんですが。
(ホント、阿呆みたいに守備範囲広いです/笑)
こうやって、ちょっとおバカを前面に出した榛名も好きなんです…如何でしょうか?
秋丸視点も榛名視点も、最後は「〜ますように!」と願い事っぽくしました。
ツンデレ榛名万歳!(あ、男だからオラニャンか?)
またこう言う甘くておバカな話、書きたいと思います(笑)
2008/2/24 東雲