気になる女子がいる。
3年も同じクラスなのに、殆ど喋った事がない女子。
スカートもそんなに短くなくて、地味で、真面目そうな女子。
でも、何か、話が合いそうな女子。
オレの記憶が正しければ、あの女子の名前は“ ”だ。
キャピキャピした女子の集団にいるのでがなく、クラスの中でも少々異質な優等生グループに属している。
でも、そのグループからは絶えず笑い声が聞こえてきて、必ずしも皆“真面目一直線!”ってわけではないらしい。
そしてその中でも、はいつも笑いを与えている側の人だった。
いつか、話してみたいと思ってた。
話し合いそうってのもあるけど、何か妙に気になってるし。
そんなわけで、少しを観察してみた。
その1.は、意外と真面目じゃない。
ヤマちゃんと一緒に飯を食いながら。
たちの会話を、盗み聞きしてみた。
「、さっきの小テストどうだったー?」
「いや、無理だよー。勘で3分の1はいけたんだけど…」
「の勘はよく当たるよね…」
「勉強せずに3分の1取れただけで充分だと思うよ」
真面目像は、どうやら違うらしい。
やっぱり、外見で人を判断するのはダメだよな。
ミニスカートで化粧とかしてるような女子とは全然違う見た目だけど。
そいつ等と同じようなノリだったりするわけだ。
その2.優等生グループの中でも、少々異色の存在らしい。
まぁ、優等生グループの中にいたら、当然優等生だと思うのは当たり前。
でもは、よくよく観察してみると、とても優等生とは思えない行動をして、周りを驚かせている。
「ー。ゴミ袋、もういっぱいだよー」
「え、マジで!でも、今からゴミ捨て場行ったら無駄足になりそうじゃない…?」
「そうだけど…明日1日持つかなぁ…」
「……押し込んでしまえ!えいっ!!」
お、わっ!?アイツ、足で袋ン中のゴミ、押し込んだぜ…!!
いつも一緒にいる女子、すげー驚いての事止めてるよ…。
見かけによらず、大胆だな。
ココにしっかり見てる奴がいる事、知らないんだろうな。
その3.野球が好きである。
春休み明け、はそのグループの中ではしゃいでいた。
内容は、春の選抜に関してだった。
手には野球雑誌を持っている。
どうやら、野球が結構好きらしい。
「昨日、勉強しようと思ったんだけど、どうしても野球気になっちゃって…」
「ふーん。私はその頃ドラマ見てたなぁ…」
「んで、せめてラジオにしようと思ったんだけど、やっぱり結局ラジオの前で全力になってました…」
……普通にガキだった。
レベル的に、野球大好きなガキだろ!!
オレはますます、に興味がわいた。
コイツ、絶対面白いだろ。
オレは明日、に話し掛ける。
++++++
今朝は朝練がなかったから、少し早めに来てみる。
は自分の席…窓際の前から3番目に座っていた。
オレの席は、の斜め後ろ。
充分話し掛けられる位置だし、あまり人が多くない今が、チャンスだろう。
ぼんやり外を見ているとの距離を、徐々に縮める。
「」
突然呼ばれて驚くかと思いきや。
はやけにゆっくりとした動きで、此方を見た。
その表情は、外を見てた時と殆ど変わらない。
「…………はい…?」
間が抜けた返事をする。
やっぱり、普段仲のいい女子と一緒にいる時とは違う感じだ。
でも、オレが話してみたいのは。
いつもの、素の。
「オレ、野球部」
「……へ?」
「だから、野球部。、野球好きだろ?」
そう言ってみると、の表情が徐々に変化していく。
硬さがいくらか、和らいだ気がする。
このまま、一気にの距離を縮めたい…!!
「何か、さ。もっと、喋んねぇ…?」
オレの思い切った台詞にも、は殆ど驚かない。
ただ、はっきりとわかる。
徐々に、口の端が上がる。
「うん、野球、好きだよ。野球の事とか、色々喋りたい、かも…」
の言葉が、予想以上に嬉しかったらしい。
オレの心臓が、急にバクバク音を立てる。
あれ、オレ、何か可笑しい…?
一人ドキドキしてるオレをよそに、はまさかの発言をする。
「あれ、あの…名前、なんだっけ?」
……思わず、古典的にズッコケそうになった。
コイツ、クラスメイトの名前覚えてなかったのかよ…!!
まぁ、素でもマイペースで周りを驚かせるらしいっちゃらしいかも、な。
気になる女子がいた。
3年同じクラスなのに、殆ど喋った事がない女子。
スカートもそんなに短くなくて、地味で、真面目そうな女子。
でも、何か、話が合いそうな女子。
本当は、地味だけど、それは面白い部分を表に出していないだけの女子。
真面目そうに見えて、実はちゃっかりしてるような女子。
そして、何だか、今オレがすっげー気になってる女子なんです。