結果なんて、後からしか分からない。
正しい事、正しくない事。
その判断は、終わりが来なければ分からない。
未来なんて、分かる訳が無い。
それでも。
人は選択を迫られ続け、そして後悔し続ける。
後悔しない道を先に知って、先にそれを選ぶ事が出来たなら。
幸せな人が生まれ、そして同時に不幸な人が生まれるだろう。
皆が幸せな道なんて、存在しないんだ。
今日は教室に行けなかった。
避けるな、と釘をさされたけど、今は何を話していいのか分からない。
だから、こうして屋上でサボって…避ける事を選んでしまった。
教室には、がいる。
もう、めっきり話す事もなくなったけど。
いや、話せない。
今更、どの面下げてに会えばいいか、わからない。
は、今私の事、もう嫌いになってるだろうな。
そう思ったら、目の奥がツン…とした。
泣くな、私。
のほうが、もっと悲しいのに。
「、さん…?」
「え……?」
空を見上げていたら、突如後ろから声がした。
あまり聞きなれない声だったけど、後ろを振り向けば見慣れた姿が。
「高瀬、君…」
直接的な面識は無かった。
ただ、の付き合いで、何度か試合を観に行っていたから、顔と名前は知っている。
でも、高瀬君は?
「何で、名前…?」
「あぁ、すみません。慎吾サンが、言ってたから…」
「島崎君が?」
「えっと、…さん、と一緒にいたとことか見かけたんで…」
と、島崎君の名前を聞くのが辛かった。
しかも、高瀬君の口から、二人同時に聞くなんて。
泣いちゃいけない、泣いちゃいけない。
泣きたいのは、私じゃない。
「何か、あったんですか…?」
「……何も、ない…」
「嘘、ですよね。さん、泣いて…」
「何も、ない…」
気付かれているけど、誤魔化したくて。
抱え込んだ膝に、顔を埋める。
高瀬君は、ゆっくりと私の横に座った。
高瀬君は暫く、黙って座っていた。
3限の始業を知らせるチャイムが、普段よりも大きく聞こえる。
チャイムが鳴り終わると、高瀬君は口を開いた。
「少し前に、さんに、付き合ってくれって…言われました」
高瀬君の言葉は、私の心に傷を作っていく。
でも、私にはそれを甘んじて受けるだけの理由がある。
寧ろ、それで済まされるようなものではない。
高瀬君は、次々と言葉を紡いでいく。
私はそれを、黙って聞いた。
「オレ、好きな人いたんです」
「でも、その人、オレの事見てなくて…出逢って瞬間に、失恋ってやつでした」
「で、この前さんに告白されて…慎吾サンと別れたって聞いて」
「オレ、この人を守るべきなのかなって、正直フラッときました」
「でも、違いますよね」
「それじゃあ、慎吾サンと同じになっちゃう…」
高瀬君は、全て分かっている。
分かってる上で、私に話している。
そして、高瀬君は自分を持っていた。
「オレ、付き合ってるのは慎吾サンとさんだと思ってました」
「な、んで…」
「だって、慎吾サンはさんを見てたし、さんも慎吾サンを見てたから…」
「ウ、ソ……」
「いや、本当に。だから、さんと慎吾サンが別れた事は、何と言うか…いつかは訪れると思ってました」
「高瀬、君…」
「何て言うか…慎吾サンの、選択した道がいけなかったんじゃないですか?」
「島崎君の、選択した、道…」
「最初から、自分の気持ちに正直にならなかった、選択ミスです…同じ部の先輩に向かって言うのも失礼だけど」
「選択、ミス…」
「さんの事、可哀想だとは思います。でも、さんにも幸せになる権利はあると思います」
高瀬君の手が、一度だけ、私の頭に乗る。
優しく、慰めるように、そして私を前へ押すような、温かい手。
涙が、出た。
私の、幸せ。
確かではないけれど、私が選ぶべき…いや、本当は心のどこかで選びたかった道。
初めて島崎君を見た時、カッコイイと思った。
顔を覗き込まれた時、ドキッとした。
島崎君の手に掴まれた、私の手は熱かった。
充分すぎる条件は揃っているのに、私は自分の心に嘘を吐き続けた。
高瀬君が示してくれた道は、正しいかどうか分からない。
それでも、選びたい、進みたいと、願ってしまう。
切りがいいので、今回は短めです。
準太連載のお返しとばかりに、準太・大活躍!(笑)
最初は利央で考えてたんですが、何となくこんな気が遣えるのは準太かな…と。
(それに準太は連載の方で慎吾サンにお世話になってるからね/笑)
準太はしっかりした子だと思います…。
3話で終了の予定でしたが、意外と長くなってしまいました。
なので、前・中・後、そして完、で終了にする予定です。
(しかも完はめっさ長いし2ページ予定とか、どんだけだ…)