一生懸命書いた手紙は、届かなかったらしい。
ちょっと阿部、ちゃんと頼んだじゃん。

なーんて、悪いのは阿部じゃないよね。

きっと阿部はちゃんと届けたんだよね。
でも、悠一郎には、私の気持ちが届かなかったんだよね。


だから、悪いのは阿部じゃない。

私、なんだ。










誰が嘲笑う、青すぎる僕等を。

― The next day










クラスの男子に誘われて星を観に行ったのは、半分自棄だった。

悠一郎には相手にされないし、結局書いた手紙も大した事ないし。
三橋邸に行っちゃった悠一郎は、きっと大騒ぎして当分帰って来ないだろうしね。



『俺、の事好きなんだけど…』



顔もカッコイイし、剣道部で1年生なのに団体戦似出てるし。
(剣道は団体戦出られるのは5人なんだから、凄いよね!)
結構ノリいいし、私が何喋っても呆れずに笑って聞いてくれるし。

ホントは、悠一郎よりよっぽどいい人なのに。



『……ごめん、ね…』



バカだよね、私。
こんな凄い人、フッちゃってさ…。
私、絶対バチ当たるよ。

それでも悠一郎が好きな私って、ホント、バカだって…。





帰って来た時、悠一郎が私の部屋の窓を叩いてくれて嬉しかった。

いつも窓から色々話してくれるけど。
やっぱり、誕生日にも来てくれるのは嬉しい。

だから今年も来てくれたのが、凄く嬉しかった、のに。





『お前なんて、なんて、大っキライだーっ!!』






悠一郎に、嫌いって言われる日が来るなんて。

好きとは言ってもらえなくても、嫌いって言われるとは思わなかった。


なんだろう、これも、自惚れだったのかな…。











「阿部っ!今日来てない!?」
「はぁ?知らねーよ」



朝練があったから、朝一でに会う事は出来なかった。

でも、2限が終わってからの休み時間も、昼休みも6組に行ったのに。
の姿は、何処にも見当たんない。



「阿部知らねーのかよーっ」
「知らねーよ。オレと同じクラスでも何でもないし…」



その言葉に、オレはあるコトに気付く。



「阿部、なんでからの手紙持ってたワケ…?」
「ん?あぁ、あれか。に頼まれたんだよ」
「なんで阿部だったわけ?」

「知るかよ。つか、お前なんで探してんだよ」



うっ…阿部はヒドイやつだ…。
オレがいっちばん気にしてることを言うなんて。

でも、ここでオレは逃げちゃいけないんだ。

オレは、にもっとヒドイことをしたんだから。





「オレ、昨日、にヒドイこと言っちゃって…」





阿部の顔色が変わった。

オレは、昨日の事を阿部に全部話した。
話したくなかったけど、の手紙を届けたのは阿部だ。
だから、阿部には話さなくちゃいけない気がした。



「ふーん…要するに、田島が一方的にキレたわけだ」
「……そーいうコトです…」

「謝りたいわけだ、田島は」



小さく、頷いた。
でも、ホントはそれだけじゃない。

に、好きって言いたい。





は屋上だ」
「は?」

「ホントは今朝、オレのところに来たんだよ。んで、今日は授業は全部サボるって言ってた」

「あ、阿部…」
「いーから早く行って来い。好きなんだろ、


「っ、阿部、ありがとーな!!」











『阿部、昨日…渡してくれたんだよね?』

『は?渡したけど…何、田島何も言わなかったのかよ』

『……ううん、それならいいんだー』

……?』

『あのさ、阿部。今日、私1日授業サボろうと思うんだ。そんな気分で…』

『……なんでそれ、オレに言うんだよ』



『保険、かな。悠一郎に何か言われたら嫌だからさー。悠一郎には、言わないでよ!ね!』











ッ!!」

「え、あ?あー、えぇっ?」



悠一郎!?

なんで私の居場所を知ってるわけ?
あーっ阿部のバカッ!!
ちょ、ちょ、逃げるべき!?

つか、昨日大嫌い宣言された、大好きな悠一郎になんか会いたくないよーっ!!





「ごめん…」

「え……」





悠一郎が、いつものふざけた調子の声じゃなくて、真剣みを帯びた声で言った。

思わず、一歩後退る。
悠一郎は、構わず近付いてくる。


……逃げるしか、ないっ!



ッ!待てよッ!!」



そりゃもう、全力疾走ですよ。
狭い屋上を、すっげー走り回った。

10分くらい、粘った。





「なんで逃げんだよ!」

「だ、だって!」





だって凄く、傷付いた。

悠一郎に嫌いって言われて、正直、どうしたらいいかわからなくて。
嫌い、って言われたのに、いつまでものこのこ悠一郎と一緒にいられるほど、私だってバカじゃない。
謝られても、昨日私に嫌いだと言った悠一郎だと思うと。

凄く、怖くて。





「うりゃっ!!」

「わっ!!!」





梯子をあがろうとしたら、悠一郎に後ろから腰に腕を回され、そのまま引っ張られた。

必然的に後ろに倒れこむ。
悠一郎は、そのまま私の身体を抱きかかえたまま倒れた。



ドサッ…





「ゆ、ゆ、悠一郎…」
「いってぇー…」

「バッ、バカッ!何してんの!!」





悠一郎の上に乗っかってる状態の私は、急いで起き上がろうとする。

でも、悠一郎が放してくれない。



「悠ッ…」



もう一度、名前を呼ぼうとした時。
悠一郎が、私の身体を抱きかかえたまま、ゆっくり起き上がった。



「け、怪我は!?」
「ケガなんてするかよ。を抱えたまま倒れたくらいで」



でも、絶対いい事はないって!

身体をぐにぐに動かしても、悠一郎は放してくれない。
もうやめてよぉ…泣きたくなるよぉ……。





「オレ、、好きだ」





聞こえてきた声と同時に、強くなった腕の力。

な、何言ってんの、悠一郎。
アンタ昨日、私に嫌いって言ったばっかじゃん!!





「昨日、がオレの誕生日に他の男と出かけたのが、すげー気に入らなかった」

「んで、今までの事を思い返してみたら、といる時って、すげー楽しいんだって気付いた」

「オレ、この先と一緒にいられなくなるの、すげーイヤだって思った」


「あの後、から手紙見て、オレ、泣いたんだよ。に悪い事言ったって思って…」





悠一郎が、私の肩に顔を埋める。
肩から、悠一郎の体温を感じた。
うわ、何か、恥ずかしいな…。

でも、悠一郎、手紙読んでくれたんだ…。





「あんなコト言ってから、こんな、好きとか言うの、オレもダメだと思う…」

「悠一郎…」

「でも、オレ、が好きって言ってくれて、すっげー嬉しくて…気付くの遅かった、って、気付いて……だからっ…」



「オレ、と、付き合って!!」





悠一郎らしい、ストレートな告白だった。

なんだろう、この気持ち。
昨日は絶望的だったはずのこの気持ち。
悠一郎はこんなに、私の心を忙しくさせる。

なんだよ、悠一郎…。

涙出てくるよ……。





「悠一郎の、バカァ……うぅ…」

……」

「私は、ずっと、好きだったんだよぉ…」

「うん、、オレ…」

「でもさ、悠一郎は、彼女とかいつもいてさ…私、自分全然可愛くないの知ってるしぃ…」

「………」

「好きだったのに、ずーっと好きだったのに…昨日なんて、人のこと、嫌いとか言ってぇ……」



「これからは、オレ、にキライなんて、ぜってー言わねー!」

「……悠一郎…」



「だから、これからも、ずっとゲンミツに、だけが好きだ!!!」









なぁ、

オレ、今回に「キライ」って言っちまった事、すげー気にしてるよ。
を傷つけた事、オレは絶対忘れない。

でもその分、オレ、もっと「スキ」で返すから。

受け止めろよ、な!




ねぇ、悠一郎。

ここまで、私にとったら、凄い長かったよ。
悠一郎が好きって気付いてから、悠一郎に好きって言ってもらえるまで、凄く長かった。
でもさ、私、よかったって思ってる。

好きって言葉の重さも、嫌いって言葉の重さも、お互い凄いよく理解できたと思うし。




誰かが私を、嘲笑ってる気がしてた。
バカみたいに想い続けてる、私の事を。
でも、きっとその誰かは。
迷いとか、不安とか、そんな私たちの中の誰かだった気がする。

だってほら、今は誰も私たちを嘲笑う人はいないし、私はこんなに幸せだから。




序でに阿部、ありがとう。

ホントに感謝してるよ!
阿部に相談してよかった!







お付き合いいただき、有難うございました!

どうにか3日で終わらす事が出来ました。
(最後の話だけやたら長く…無理矢理感ありまくりですが)
でも、どうにか前日、当日、翌日の3部構成でいきたかったもので…。
ちょっと話の展開も無理矢理だったかな…と反省してます。
いつか…加筆修正したりするかもしれません。

とにかく、田島君やったね!おめでとう!!
祝った感ないけど、一生懸命祝ってるつもりだから!ね!!(笑)


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